遠野物語ファンタジーライブラリー: 第9~12回
第9回「羽衣の詩」
新シリーズ第1弾として、市民センター主催から「遠野物語ファンタジー制作委員会」が作られ市民主体の取り組みに移行し、いよいよ「市民の舞台」の真の姿に接近した。
演出の手法が、これまでの史実重視から、民話長で幻想的作風に切り替えた。役者地震が歌を歌いながらストーリーを展開していく手法や25曲ものオリジナル曲、切り絵風の舞台美術、衣装やメイクの新鮮さなど各分野で思い切った舞台づくりに挑戦し、「民話音楽劇」をめざした。「遠野物語拾遺第三話」の“天人児”を題材にした作品は“人の真心を織る天女の願い”を一方の悪と対置させながら訴えかけた。8月に受賞した「サントリー地域文化賞・最優秀賞」は、参加者に熱気を注入し、創作集団「水車」が出来、舞台作り講習会や脚本検討会が開催され技術の向上を図った。
キリリと輝く星が一つ、昇天した天女を偲ぶ村人たちの心に、明日への希望がこめられていた。
第10回「風のよどむ淵」
市民の舞台10周年の節目と、市制施行30周年記念事業とが重なり、関係者は早くから準備に入った。
テーマは「遠野物語」の代表的昔話“カッパ”である。多くの餓死者を数えたという天明の飢饉を時代背景として、悪徳過信による不当な圧迫の中で生きていく百姓たちの姿を見て、カッパが予言を与え救う、というストーリーで、総参加者350名が全てを傾注しての舞台だった。参加者の若返りを図ったのも特筆すべき天で、20代前半の青年がキャストになり大半を占めたことによって、役作りの面でも新鮮さが出、活気がみなぎった。
11月に、市民の舞台など、うるおいのある町づくり運動が評価されて「自治大臣表彰」を受賞したことは、関係者を励ました。又、NHKテレビが長期取材をし、舞台作りの経過や公演当日の様子を、ドキュメンタリー「人間列島」で全国放送するなど、内外の注目が高まったことが特徴だった。
第11回「かぶ焼き殿様」
再スタートとしての舞台、11年目の公園は、正に遠野物語ファンタジー10年の歴史とその成果、課題の論議の中から創られた。市民の中でも着想の転換を求める声が出され、関係者は早い段階から検討した。暗い世相だからこそ舞台だけでも明るさを・・・・・。遠野の先人は、明るく生き続けてきたのだから・・・・・。過去10回の舞台は「悲劇」できたから、今度は「喜劇」で行こう。
参加者は“笑われないような喜劇を”を合言葉に、初の試みに一丸となって挑んだ。そして本番は見事に成功し、1公演に250ヶ所で観客の拍手と爆笑が飛んだ。
キャストは大半が20代、演出の質的向上を目指す意気込みと呼吸も合い熱気があふれた。
11月に岩手県教育委員会表彰の栄誉を受けたことは、関係者を一層励まし、公演の成功に多大な貢献をし、今後20回をめざす「市民の舞台」運動に確信を与えた。
第12回「天竜の角」
前作、「喜劇かぶ焼き殿様」が好評だったことから、再度喜劇に挑戦。テーマもそれにふさわしく遠野南部の初代の殿様「清心尼」が女の殿様として、家臣をいましめるために「片角様」を御開帳するというもので、初めて武家社会を舞台化した。
取り組みが若干遅れたものの集中的な準備で舞台づくりが進められた。
音楽の充実と演奏の参加団体の広がりも、ひとつの特徴でした。初めて遠野中学校の吹奏楽部と合唱部が参加し、はつらつとしたサウンドで舞台を盛り上げた。
遠野物語ファンタジーが、大人と子どもの合作で創り上げていくことの意識を再確認した取り組みであった。
お問い合わせ
遠野市民センター/遠野物語ファンタジー制作委員会事務局
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