第33回「まま娘のおかん」

 33回目は宮守町達曽部の民話「継子のおかん」を題材に、継母のいじめを受けながらも人を信じて一生懸命に生きる娘おかんの姿を描いた。雲の上の作太夫、天保の一揆や蔵破り、遠野遺産にも認定された「呼ばり石」などの話をちりばめ物語を展開。
 演出を担当したのは裏方大道具のベテラン糠森正和氏。今回の舞台は子役が多く、中高生が老人を演じたり、座敷わらし役が9人もいたりと難しいキャスト構成となったが、稽古を重ね、激を飛ばした。
 突然つぼが割れるシーン、老婆から娘へ早着替えするシーン。小道具や衣装・メイクスタッフは苦心しながらも、本番には完璧に仕上げた。舞台となった宮守町達曽部からは湯屋神楽が出演し、婦人会が衣装作りやわらべうた指導を行った。
 継母のいじめもコミカルに、笑いあり涙ありの楽しい舞台。どんでん返しの末の感動的なラストは観客の涙を誘った。
 3回目の公演には、昭和51年の初演からの入場者が8万人を突破し、記念セレモニーが行われた。毎年引き継がれる市民が創る市民の舞台。33回目は“燦燦”と輝く舞台となった。

第34回「火渡舘の変「阿曽沼興廃記」より」

 12世紀の終わり頃から400年余り続いた阿曽沼時代から南部領へと変わっていく時代に、裏切りや殺りくなどが起こり、世の中が大きく変わっていく中、忠節をつらぬいた附馬牛火渡の館主「火渡玄浄」と家臣、その妻たちの生き様を描いた。
 武家社会を舞台化したのは新しい試みであり、史実を基に実在の人物を描いたため、丁寧な作品作りを心がけた。また、遠野物語の世界を表現したバレエや大ムカデの退治シーン、キャストを釣り上げる場面など、舞台づくりに工夫を凝らし、壮絶なラストには、役者の熱演と勇壮なテーマ曲「栄枯」とが一体となり、会場は感動に包まれた。

第35回「オシラサマ昇天」

 『遠野物語』発刊100周年を記念した公演で、『遠野物語』を代表する「オシラサマ」を初めて脚本化した。物語は2幕12場で構成され、『遠野物語』に登場する「神隠し」の話を織り交ぜながら、若い娘トトと白馬シラの悲しい愛の行方を描いた。
 一日中シラと一緒にいて縁談を断り続けるトト。それに業を煮やした父は、馬の首を切り落とし、悲しむトトはシラの首に乗って昇天してしまう。スタッフが悩み苦しんだのはラストの昇天シーン。馬の首と娘が天に昇る仕掛けのタイミングは本番当日の朝まで調整がはかられたが、本番は見事に昇天した。
 また、馬をどう演技させるか、演出のベテラン加倉幸治氏も頭を悩ませたが、ひ弱な馬とたくましい馬を製作、そしてトトを助けるシーンではバレエでうまく表現するなど工夫を凝らした。
 『遠野物語』発刊100周年にちなんだツアーも数多く組まれ、全国各地から多くの方が来場。3回公演で約2400人の観客から暖かい拍手が送られた。

第36回「袖ヶ沢 月下の桜」

 宮守町鱒沢に伝わる二つの伝説「鉄砲の達人 三平」と「別れ桜」をもとに物語を構成し、舞台化した。
 豪農・袖ヶ沢家で幼い頃から使用人として奉公していた喜助とタカは恋仲で、夫婦となる約束をしていたが、タカのことを見初めた殿様がタカを差し出せと言い出した。3年たったら返すとの約束を殿様から取り付け、喜助との別れに桜を植え、3年後の再会を誓うが、タカは現れず、江戸吉原へ売られたとの話を聞かされる。
 クライマックスとなる「おいらん道中」のシーンでは、花魁となったタカを遠くで見守るしかなかった喜助に観客が涙し、会場からは温かい拍手が送られた。

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