遠野市内には埋蔵文化財包蔵地が約500ヵ所確認されています。埋蔵文化財包蔵地内での掘削工事は事前に届出が必要になりますので、「遠野市埋蔵文化財保護事務手続きマニュアル」に従い手続きを行ってください。

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1-1 埋蔵文化財とは

 埋蔵文化財は、法では「土地に埋蔵されている文化財」(文化財保護法第92条)と定義されており、文化財の分類ではなく、埋蔵されている状態に着目して区分され、別個の保護制度の対象とされています。

 埋蔵文化財は、住居跡や陥し穴のように過去の人間活動の痕跡を示す「遺構」と人間活動で使用された土器・石器等・金属器、さらに考古学上意味をもつ動物遺存体や植物等も含む「遺物」に分けられます。

 それらが包蔵されていることが確認できている土地が「周知の埋蔵文化財包蔵地」であり(文化財保護法第93条第1項)、前述のような場所(土地)を一般的には「遺跡」といいます。

1-2 埋蔵文化財(遺跡)の特性

 埋蔵文化財は、土地に埋蔵されているため一般的にはわかりにくく、表面的な観察ではその内容を十分把握できません。専門的な発掘調査よってのみ、その内容が明らかにされるものです。このため、遺跡地図(「岩手県遺跡情報検索システム」や「いわてデジタルマップ」)に搭載されている埋蔵文化財包蔵地とその範囲は絶対的なものではなく、開発事業などにより新たな遺跡の発見や、従来の遺跡範囲が拡大することも少なくありません。

 遺跡が立地する場所は、平坦な地形が広がる段丘面上、あるいは南向きの緩斜面地。自然堤防上などが一般的です。このことは、埋蔵文化財包蔵地が我々の生活領域と重なる場合が多く、現代人の活動との関わりが生じやすいことを物語っています。一方で埋蔵文化財の包蔵地そのものは、例えば、耕作などにより遺物の一部がわずかに地表に現れる程度の様相を示すもの、地表ですでに露出しているものもあるなど、人々の身近にあるにもかかわらず、不用意に見過ごされがちであるため、土木工事等による軽微な掘削によって容易に破壊される可能性をもっています。さらに埋蔵文化財包蔵地は、一度発掘調査をすると二度と復元できないこと、全く同じ遺跡が他に存在しないこともまた事実です。

 埋蔵文化財はこれら相矛盾する性格をもっているため、文化財保護法上では、土木工事等による事前の発掘調査はもとより、学術調査でさえも届出を必要とするように、その保護のための規制が加えられています。

 また、他の文化財は指定等を受けて始めて保護の対象になりますが、埋蔵文化財についてはすべてが文化財保護法の適用を受けることになっています。

2-1 埋蔵文化財の意義

 わが国や郷土の歴史・文化を正しく理解するためには、的確で具体的な資料が必要になります。

 埋蔵文化財は、長い歴史の過程において残ってきたものであり、それぞれが歴史的時間の重みを有しているとともに、それを作り出した人々・社会・地域・時代などの内容をそれ自体に内在している歴史的・文化的な資料として価値をもったものです。また埋蔵文化財は、それ自体に内在する価値によって、現在の人々に精神的な面や創造活動において働きかけを有するという点で、まさに「貴重な国民的財産」といえます。

2-2 埋蔵文化財の保護

 埋蔵文化財の破壊を避けるためには、文化財保護担当者側の注意喚起や関係者への働きかけが不可欠であるが、開発者も事前の遺跡箇所の確認を怠ってはならないことはいうまでもありません。そして埋蔵文化財の存在が認められた場合は、関係教育機関の指導に基づく適切な取り扱いが必要になります。

 埋蔵文化財の意義とその国民的財産としての重要性を踏まえるとき、学術的な発掘調査や保護・活用を前提とした調査以外は、できる限り現状保存としてその活用を図ると共に、後世に伝えていくことが望ましい姿です。

 しかし、限りある国土の利用を考えた場合、すべての埋蔵文化財包蔵地を現状のまま残すことは不可能であり、開発事業との調和を図ることが必要です。埋蔵文化財の意義と正確に留意しつつ、文化財保護側と開発者側は、相互の理解と調整によって、保存または記録調査保存を行い、後世に伝えていく必要があります。

3 埋蔵文化財として扱うべき遺跡の範囲について

 埋蔵文化財として扱う範囲については、次の(1)に示す原則に則しつつ、かつ(2)に示す要素を総合的に勘案するとともに、地域における遺跡の時代・種類・所在状況や地域的特性を十分考慮して、必要に応じて定めるものとします。

(1) 埋蔵文化財として扱う範囲に関する原則

(ア)おおむね中世※1までの遺跡はすべての埋蔵文化財を対象とする。

(イ)近世※2に属する遺跡については、次に掲げるものについて埋蔵文化財の対象とする。

  • 城館・城郭等政治・行政関連の遺跡
  • 窯跡・製鉄遺跡等生産関連の遺跡
  • 寺社等宗教関連遺跡については、遺構等の遺存が明確な場合
  • 城下町・都市遺跡については、遺構等の存在が明確な場合
  • 一般集落については、地域において特徴的な性格を有するもの
  • その他地域において必要と判断されるもの                                    

(ウ)近現代※3の遺跡については、地域にとって特に重要な意義を有する遺跡を埋蔵文化財の対象とする。

(2) 埋蔵文化財として扱う範囲の基準の要素

遺跡の時代・種類を主たる要素とし、遺跡の所在する地域の歴史的な特性、文献・絵図・民俗資料その他の資料との補完関係、遺跡の残存状況、遺跡から得られる情報量を副次的な要素とします。

※次に掲げる場合においては、遺物量が少量であっても発掘調査を要する範囲とする。

  • 旧石器時代及び縄文時代草創期、縄文時代早期の場合
  • おおむね弥生時代後期から古墳時代相当期の場合
  • おおむね古代後期から中世初期の場合
  • その他地域において特に必要と認められた場合

「埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化について」(平成10年9月29日付け庁保記第75号) 別紙1「発掘調査を要する範囲の基本的な考え方」より

※1 おおむね鎌倉・室町・安土桃山時代を区分   

※2 江戸時代を区分

※3 明治時代以降を区分

4 遠野市文化財保護事務手続きフローチャート

 

開発事業に対する埋蔵文化財の取扱い

《注》

 遠野市文化課では、農地転用申請時、建築確認申請時に無届で工事等が行われていないか確認しています。確認により発掘届の提出を求める場合がありますので、その場合は早急に届け出るようにお願いします。

 なお、無届で工事を実施した場合、工事中止命令を行う場合があり、その場合遠野市教育委員会に顛末書を提出の上、取扱いについて指導を受ける必要があります。

 また、試掘調査が必要と判断された場合、調査に1~7日間程度を要する場合があります。

発掘調査の流れ

 

5 埋蔵文化財保護と開発事業との調整・手続き 

(1) 開発事業の企画構想

 新規事業の選定に当たっては、周知の埋蔵文化財包蔵地を極力除外することが望ましいです。先に述べたように、例え記録保存調査(発掘調査)を実施したとしても遺跡が失われてしまう事実に変わりありません。開発事業者は開発事業の企画構想の段階から、当該教育委員会に照会するなど、周知の埋蔵文化財包蔵地の把握に努め、できる限り遺跡の範囲に開発が及ばないよう計画をする必要があります。

 企画構想(計画策定)段階での周知の埋蔵文化財包蔵地の所在についての照会は(照会様式1、2)を参照していただきたいです。開発事業が決定している場合は事前協議となります。

(2) 事前調整

1 事前協議

 遠野市内の市町村開発事業及び民間開発事業については、遠野市教育委員会が窓口となり事前協議を行っています。この事前協議とは、工事が埋蔵文化財に影響を与えるかどうかを判断し、その取扱いを検討するものです。

 事前協議は、土木工事によって埋蔵文化財が破壊されることを防ぐとともに、工事中に埋蔵文化財が確認されたために工事が中断あるいは中止となるような社会的損失を未然に防ぐことに繋がっている。

2 事前協議の流れ

 市町村開発事業及び民間開発事業の開発計画ができあがった段階で、事業者が遠野市教育委員会に文書で協議を求めて頂きます(発掘届様式1、2)。遠野市教育委員会は、遺跡地図や過去の調査データを基に、事業予定地に周知の埋蔵文化財包蔵地(遺跡)がどこに、どれだけ、どのように所在しているかを確認し、埋蔵文化財の取扱いについて回答します。重要な遺跡が所在する、または遺跡が多数所在するため事業地の変更を検討せざるを得ない場合も考えられます。

(3) 事前調査

1 分布調査について

 分布調査とは、事業予定地内の周知の埋蔵文化財包蔵地(遺跡)の取扱いを検討するため、または未知の遺跡が所在する可能性の有無を確かめるために行われるものです。事業予定地内を調査員が踏査し、遺物の有無(地表観察)や地形などを観察します。

2 試掘調査について

 事業予定地内の地下の状況を工事着手前に部分的に掘削し確認する調査を試掘調査といいます。事業地内における埋蔵文化財の取扱いについて検討するために行う事前調査です。重機や人力で事業予定地を剥ぎ、掘り下げながら遺物や遺構の有無を、土層を確認します。

 試掘調査が事前協議において必要とされた場合、遠野市教育委員会へ依頼してください(様式1)。試掘調査を実施するための諸経費は原則として遠野市教育委員会で負担しますが、年度の予算範囲内での実施となるため、場合によっては重機代等を負担して頂きます。

(4) 事前調整(保存に係る協議)

 事前調整を実施し、事業予定地範囲内において埋蔵文化財が確認された場合、現状保存の可否で、その後の取扱いが異なります。国の通知「(庁保第75号 平成10年9月29日 埋蔵文化財保護と発掘調査の円滑化等について 文化庁次長通知)」に沿って、以下の調整を行います。

1 事業見直し

 現状保存が可能な場合は、遺跡保存のため、事業区域から除外します。

2 工法変更(様式2)

 やむを得ず事業区内に含める場合で埋蔵文化財が保護される工法へ変更できる際(例:圃場整備事業等における保護盛土等)は、広報変更協議を行います。この工法変更協議により、埋蔵文化財が保護されることを当該教育委員会が確認した後、事業者は工事に着手することができます。

3 発掘調査

 やむを得ず現状保存が不可能な場合は、記録保存(発掘調査)を実施します。

(5) 行政上の指示・勧告

 周知の埋蔵文化財包蔵地で工事を行う予定の場合は、文化財保護法第93、94条の発掘の届出、通知の手続きをとることとなります。試掘調査が必要と判断された場合は工事に着手する前に試掘調査を実施することが望ましいです。試掘調査の結果、「発掘調査」、「工事立会」、「慎重工事」の行政上の指示、勧告がなされますが、その対応のおおよその区分は以下の通りです。

1 「発掘調査」

 事業予定範囲内で現状保存が不可能な場合、記録保存(発掘調査)を実施する必要があります。

 この指示を受けた事業者は、速やかに(発掘届様式1-1~4)を提出し、(6)のa~fの内容について文化課と協議して下さい。なお、協議の記録は、必ず記録し、文書として保存してください。

2 「工事立会」

 対象地域が狭小で、通常の発掘調査が実施できない場合及び工事が埋蔵文化財を損壊しない範囲内で計画されているが、現地で状況を確認する必要がある場合で、工事中に埋蔵文化財が発見された場合は、ただちに記録保存する必要がある。

 この指示を受けた事業者は、速やかに(様式3)の書面を提出し、工事日程を遠野市教育委員会文化課にご連絡下さい。

3 「慎重工事」

 遺構の状況と工事の内容から、発掘調査、工事立会の必要がないと考えられる場合です。ただし、工事中に埋蔵文化財が発見された場合は、遠野市教育委員会へ連絡するなどの対応が必要です。

(6) 記録保存のための発掘調査

1 記録保存(発掘調査)

 工事範囲内で現状保存が不可能な場合は、記録保存(発掘調査)を実施します。発掘調査を行う場合は、主に以下の(ア)~(ウ)であり、詳細は、前記(庁保記第75号)に沿って実施することになります。

 (ア) 埋蔵文化財が掘削され、破壊される場合

 (イ) 埋蔵文化財に影響を及ぼすおそれがある場合

 (ウ) 恒久的な工作物の設置により相当期間にわたり埋蔵文化財と人との関係が絶たれ、当該埋蔵文化財が損壊したのに等しい状態となる場合

 発掘調査が決定した場合は、次の点についてさらに協議します。

 a 発掘調査の対象面積、範囲等

 b 発掘調査実施機関

 c 発掘調査経費の額及び負担者

 d 発掘調査工程と、当該事業工程とのスケジュール調整

 e 発掘調査地の地権者等の承諾状況及び出土遺物の帰属について

 f 発掘調査後、重要な遺構等が確認された場合の再度の協議の確認

 これらの協議内容については、必ず記録し、保存しておく必要があります。

2 発掘調査経費

 発掘調査経費について事業者に負担を求める場合(いわゆる原因者負担)があります。その事業の規模、性格、事業者の能力等を遠野市教育委員会に十分説明するとともに、発掘調査の目的、積算根拠等の説明を受けてください。なお、原因者負担の原則は、次の理由により一般的に是認されています。

 (ア) ある土地が埋蔵文化財を包蔵しているのはその土地本来の属性であり、土地利用にあたって埋蔵文化財の破壊等の行為を伴う場合には、最低限その代償として記録保存の措置をとることが不可欠であること。

 (イ) 記録保存のための発掘調査は、文化財保護上必ずしも望ましいものではないので、原則的にはそのような調査をせざるを得ない事態の原因となった事業の事業費に調査費用を含め、その負担によって調査を行うべきものであること。なお次の内容の発掘調査に関しては、原則として文化財保護側が負担することになっている。

 a もっぱらその個人の用に供する住宅の建築

 b 農業基盤整備事業及びその関連事業に係る農家負担分

 c 零細なため費用負担を求めることが困難と判断される事業者の開発事業

6 埋蔵文化財保護に関する問い合わせ先

遠野市遠野市民センター文化課 埋蔵文化財担当

遠野市立図書館博物館内

住所 〒028-0515 岩手県遠野市東舘町3番9号

電話 0198-62-2340

ファックス 0198-62-5758

メール bunka@city.tono.iwate.jp

7 届出様式

埋蔵文化財保護に係る届出様式は次の通りです。

様式 提出部数 届出期限 備考

照会様式1(事前確認用).doc [43KB docファイル]  

必要の都度 文書による回答が不要な場合

照会様式2(建築工事関係).doc [41KB docファイル] 

1 必要の都度 文書による回答が必要な場合

様式1 試掘調査の依頼.docx [24KB docxファイル] 

1 事業着手の60日前  

様式2 埋蔵文化財保護に係る工法協議.docx [25KB docxファイル] 

1 事業着手の60日前  

様式3 工事立会の依頼.docx [26KB docxファイル] 

1 事業着手の60日前  

様式4 遺跡の不時発見届・通知.docx [29KB docxファイル] 

1 遅滞なく  

発掘届様式1-1~4.doc [82KB docファイル] 

1 事業着手の60日前 1、2、3 記名押印必要
 

※やむをえない事由により60日以上前に発掘届を提出することが難しい場合、着手日より最低14日以上前に発掘届を提出するようお願いします。