遠野市歴史文化基本構想

「歴史文化基本構想」とは、地域に存在する文化財を、指定・未指定にかかわらず幅広く捉えて、的確に把握し、文化財をその周辺環境まで含めて、総合的に保存・活用するための構想であり、地方公共団体が文化財保護行政を進めるための基本的な構想となるものです。
遠野市では平成28年度から平成30年度において、文化庁文化芸術振興費補助金の交付を受けながら、市内の文化的資産の把握調査を実施し、遠野市歴史文化基本構想検討委員会(委員長 熊谷常正盛岡大学教授 ほか10名)で検討を重ねながら策定作業を進め、平成31年3月22日に遠野市歴史文化基本構想を策定しました。
遠野市は柳田國男の『遠野物語』によって「民話のふるさと」や「民俗学の聖地」として、全国的に知られてきました。また「遠野遺産認定制度」を平成19年度からスタートし、全国的にもいち早く市民遺産制度を採り入れて、文化的なまちづくりに取り組んできました。こうした流れを継承し、「『遠野物語』を紡ぎ続ける遠野の未来創造」を大きなテーマとして、この構想に基づいてまちづくりを進めていきます。

遠野市歴史文化基本構想表紙

遠野市歴史文化基本構想_表紙_第1章.pdf [11097KB pdfファイル] 
遠野市歴史文化基本構想_第2章.pdf [19015KB pdfファイル] 
遠野市歴史文化基本構想_第3章.pdf [2915KB pdfファイル] 
遠野市歴史文化基本構想_第4章.pdf [6628KB pdfファイル] 
遠野市歴史文化基本構想_第5章_奥付.pdf [4311KB pdfファイル] 

遠野市歴史文化基本構想の概要

・ 既存の文化施策を総括し、指定文化財、遠野遺産、建造物や石碑等無形文化財の文化的資産を把握・整理して、保存活用の方針を定めました。
・ 文化的資産の活用促進のため、『遠野物語』と関連付けて4つの文化財群に整理しました。
・ 市内各地域で保存活用を推進するため、7つの歴史文化保存活用区域を設定し、うち3つは重点区域としました。

保存活用のための取り組み

地道な文化資産の調査と整理の計画的継続
市史編さん事業と連携し、これまで不足していた重要な文化資産の調査を実施します。博物館等で収蔵している膨大な資料の整理と保管のため、データベースの構築作業の継続と、安定的で一括管理ができる収蔵施設の整備を検討します。遠野遺産認定制度による未指定文化財の継続的な調査を実施します。

市民協働による文化財の保護と活用
南部曲り家として代表的な重文千葉家住宅の活用を検討する「重文千葉家の活用を考える会」及び、重文景土淵山口集落の住民組織「おらほのながめづくりの会」、各遠野遺産推薦団体、各郷土芸能保存会等との連携と必要な自立支援を行います。

文化的景観の視点による総合的な保存活用
遠野全体が文化的景観という視点に基づき、すでに重文景選定地となっている、荒川高原牧場、土淵山口集落の整備を進めます。重文千葉家周辺も追加選定に向けた準備を実施します。遠野遺産認定制度による市独自の文化的景観保護を継続します。

多様な対象への文化資産の情報発信
これまで遠野に一定数訪れていた欧米や、近年増加している台湾などの外国人に向けて、従来の紙媒体やHPによる情報発信の継続とサイン整備を行い、すでに博物館に導入している多言語ガイド端末の活用を推進します。展示施設の整備には、VRやARの導入も検討します。

関連文化財群

明治43年発刊の『遠野物語』は遠野に語り継がれた不思議な事象をまとめたもので、遠野市のまちづくりに大きな影響を与えてきました。これをキーワードとして4つの関連文化財群を設定しました。

1 大昔はすべて一円の湖水なり
-『遠野物語』の原点となる創造的世界を生み出した自然と原始・古代の文化-

2 山奥には珍しき繁華の地なり
-『遠野物語』の胎動となる骨格社会を形成した中近世の文化-

3 馬千匹、人千人の賑わしさなり
-『遠野物語』の誕生、地域の自負を育んだ明治期を中心とする文化-

4 平地人を戦慄せしめよ
-『遠野物語』の民俗的世界の継承と新たな文化が融合した近現代の文化-

歴史文化保存活用区域の設定

1 『遠野物語』を育んだ歴史文化保存活用区域(重点区域)土淵地区

2 南部曲り家千葉家周辺の歴史文化保存活用区域(重点区域)綾織・鱒沢地区

3 中世の歴史と城下町の歴史文化保存活用区域(重点区域)遠野・松崎地区

4 早池峰山と信仰の歴史文化保存活用区域 附馬牛地区

5 六角牛山周辺の歴史文化保存活用区域 青笹・上郷地区

6 金山と藩境の歴史文化保存活用区域 小友地区

7 街道沿いに栄えた歴史文化保存活用区域 宮守・達曽部地区

 

関連文化財群と保存活用区域