令和6年5月17日、父母の離婚等に直面するこどもの利益を確保することを目的として、民法等の一部を改正する法律が成立しました。

 この改正法は、こどもを養育する父母の責務を明確化するとともに、親権(単独親権、共同親権)、養育費、親子交流などに関するルールの見直しが行われるものであり、令和8年4月に施行される予定となっています。

 主な改正内容は、以下のとおりです。

1.親の責務に関するルールの明確化

 親権や婚姻関係があるかどうかにかかわらず、こどもを育てる責務と義務についてのルールが明確にされました。

◇こどもの人格の尊重

 父母は、親権や婚姻関係の有無に関係なく、こどもが心も体も元気でいられるよう育てる責任があります。こどもの利益のために、こどもの意見にしっかりと耳を傾け、こどもの人格を尊重しなければなりません。

 

◇こどもの扶養

 父母には、親権や婚姻関係の有無に関係なく、こどもを養う責任があります。「養う」度合いは、こどもが親と同じくらいの生活を送れる水準でなければなりません。

 

◇父母間の人格尊重・協力義務

 父母は、親権や婚姻関係の有無に関係なく、お互いを尊重して協力し合う義務があります。

 下記のような行為は、このルールに違反する場合があります。(※1)

 ・暴力や相手を怖がらせるような言動、濫訴

 ・他方の親によるこどもの世話を不当にじゃますること。

 ・特段の理由なく他方に無断でこどもの住む場所を変えること。(※2)

 ・特段の理由なく約束した親子の交流の実施を拒むこと。

 

 ※1 違反した場合、親権者の指定又は変更の審判、親権喪失又は親権停止の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性があります。

 ※2 暴力等や虐待から逃げることはルールに違反しません。

 

◇こどもの利益のための親権行使

 親権(こどもの世話や教育をしたり、こどもの財産を管理したりする権利や義務)は、こどもの利益のために行使しなければなりません。

 

2.親権に関するルールの見直し

◇父母の離婚後の親権者

 これまでの民法では、離婚後は、父母のどちらかだけを親権者として決めなければなりませんでした。

 これからは、離婚後に父母2人ともが親権を持つ共同親権、1人だけが親権を持つ単独親権の選択ができるようになります。

 

◇親権の行使方法(父母双方が親権者である場合)

 父母双方が親権者である場合の親権の行使方法のルールは、以下のとおりです。

 ■親権は、父母が共同して行います。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他方が行います。

 ■監護教育に関する日常の行為(※)をするときや、こどもの利益のため急迫の事情があるときは、親権の単独行使ができます。

 ■特定の事項について、家庭裁判所の手続で親権行使者を定めることができます。

 

 ※監護教育に関する日常の行為とは、日々の生活の中で生じる監護教育に関する行為で、こどもに重大な影響を与えないものをいいます。個別具体的な事情によりますが、例えば、日常の行為に当たる例、当たらない例としては、次のような場合があります。

 

 日常行為に当たる例(単独行使可)

 ■食事や着る服を決めること。

 ■短期間の観光目的での旅行へ出かけること。

 ■心と体に大きな影響がない治療などを決めること。

 ■通常のワクチン接種

 ■習い事

 ■高校生の放課後のアルバイトの許可

 

 日常行為に当たらない例(共同行使)

 ■こどもの引っ越し(※)

 ■将来の進学先を決めること。

 ■心と体に大きな影響のある治療などを決めること。

 ■財産の管理

 

 ※暴力等や虐待から逃げることは、ルールに違反しません。

 ※父母の意見が対立するときは、家庭裁判所で、父母のどちらかが1人でその事項を決められるようにする裁判を受けることもできます。

 

 一方の親が決められる緊急のケース

 父母の協議や家庭裁判所の手続きを待っていては親権の行使が間に合わず、こどもの利益を害するおそれがある場合には、日常の行為に当てはまらないケースでも父母の一方が単独で決めることができます。

 個別の事情にもよりますが、例えば、緊急のケースとしては、次のような場合があります。

 ■DVや虐待から逃れるために引っ越しなどをする場合

 ■病気や怪我などで急ぎの治療が必要となる場合

 ■入学試験の結果発表後に手続きの期限が迫っているような場合

 

3.養育費の支払確保に向けた見直し

◇合意の実効性の向上

 これまでは、養育費の支払いがされない場合には「債務名義」という一定の文書(公正証書、調停調書など)が必要でしたが、今回の改正によって「先取特権」と呼ばれる優先権が与えられるため、文書で養育費の取り決めがあれば、その文書をもって一方の親の財産を差し押さえる申立てが可能になります。

 

◇法定養育費

 離婚時に養育費の取り決めがなくても、取り決めるまでの間、こどもと暮らす親が他方の親へ、こども一人あたり月額2万円の養育費を請求できる制度です。離婚後もこどもの生活が守られるよう設けられました。

 養育費が決まるまでの暫定的、補充的なものであり、父母の協議や家庭裁判所の手続きにより、各自の収入などを踏まえた適正な額の養育費の取り決めをしていただくことが重要です。

 ※法定養育費は、父母間で取り決めるべき養育費の標準額や下限額を定める趣旨のものではありません。

 

◇裁判手続きの利便性向上

 家庭裁判所は養育費に関する裁判所手続きをスムーズに進めるために収入情報の開示を命じることができることとしています。

 また、養育費を請求する民事執行の手続きでは、地方裁判所に対する1回の申立てで財産の開示、給与情報の提供、判明した給与の差し押さえに関する手続きを行うことができるようになります。

 

4.安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し

◇親子交流の試行的実施

 家庭裁判所の手続き中に親子交流を試行的に行うことができます。家庭裁判所はこどものことを最優先に考え、実施が適切かどうかや調査が必要かなどを検討し、親子交流の試行的実施を促します。

 

◇婚姻中別居時の親子交流

 父母が婚姻中にこどもと別居している場合の親子交流は、こどものことを最優先に考えることを前提に、父母の協議で決め、成立しない場合には家庭裁判所の審判等で決めることが明確にされました。

 

◇父母以外の親族とこどもの交流

 こどもと祖父母などとの間に親子のような親しい関係があり、こどものために特に必要があるといった場合は、家庭裁判所はこどもと父母以外の親族との交流について定められるようになります。

 

5.こども家庭庁作成リーフレット等

 〇リーフレット

  https://support-hitorioya.cfa.go.jp/assets/pdf/leaflet.pdf

 〇パンフレット

  https://support-hitorioya.cfa.go.jp/assets/pdf/pamphlet_A3.pdf

 〇ひとり親家庭のためのポータルサイト

  https://support-hitorioya.cfa.go.jp/

 〇動画

  ・民法等改正について

   https://youtu.be/-1L9BbH1cWM

  ・児童扶養手当について

   https://youtu.be/L1MVYGjlp_A