はじめに

近年の情報技術の進展とインターネットの急速な普及を踏まえ、政府はいわゆる「電子政府」の実現を目指し、既に、行政手続きの電子化、地方公共団体も含めたネットワーク化に取り組んでいる。遠野市(以下「市」という。)においても、国で進めている住民基本台帳ネットワークや総合行政ネットワークなどの情報通信基盤の整備をしてきており、急速なネットワーク化に直面しているといえる。

このようなネットワーク化の実現は、行政事務の効率化を図る一方で、不正行為による情報の破壊や外部流出等の懸念を現実のものとする。そのため、市としても、住民の個人情報を含む市の情報資産に対するセキュリティ水準の維持管理を重要な課題として位置付けているところである。

このような状況において、市の取り扱う情報資産をあらゆる脅威から保護するため、情報セキュリティ水準を一層向上させることとし、市の情報セキュリティ対策に関する統一的かつ基本的な方針として「遠野市情報セキュリティポリシー」を定めるものである。

また、この情報セキュリティポリシーに基づき、情報システムの具体的な対策手順として、情報セキュリティ実施手順を策定することとする。 

遠野市情報セキュリティポリシーの構成 

遠野市情報セキュリティポリシーの構成画像

遠野市情報セキュリティ基本方針

平成17年10月1日
訓令第5号

(趣旨)
第1 この訓令は、第4第1号に掲げるものが保有する情報システム、情報資産及び記録媒体を様々な脅威から保護し、機密性、完全性及び可用性を維持するため、情報セキュリティに関する対策の統一的かつ基本的項目を定めるものとする。

(定義)
第2 この訓令において、次の各号に掲げる用語の定義は、当該各号に定めるところによる。

  1. ネットワーク コンピュータ等を相互に接続するための通信網、その構成機器(ハードウェア及びソフトウェア)をいう。
  2. 情報システム コンピュータ、ネットワーク及び電磁的記録媒体で構成され、情報処理を行う仕組みをいう。
  3. 記録媒体 電子計算機に使用される電子的方式、磁気的方式又は光学的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られたデータを記録するための機器媒体をいう。
  4. 情報資産 電子的、磁気的又は光学的に記録された情報(以下「情報」という。)及び情報を管理する仕組み(以下「プログラム」という。)の総称をいう。
  5. 情報セキュリティ 情報資産の機密性、完全性及び可用性を維持することをいう。
  6. 機密性 情報にアクセスすることを認められた者だけが、情報にアクセスできる状態を確保することをいう。
  7. 完全性 情報が破壊、改ざん又は消去されていない状態を確保することをいう。
  8. 可用性 情報にアクセスすることを認められた者が、必要なときに中断されることなく、情報にアクセスできる状態を確保することをいう。
  9. 情報セキュリティポリシー 本基本方針及び情報セキュリティ対策基準をいう。
  10. 情報セキュリティ基本方針 情報セキュリティを維持する方策に関する根本的な事項を定めたものをいう。
  11. 情報セキュリティ対策基準 情報セキュリティ基本方針に基づき、情報セキュリティの維持のために遵守すべき行為及び判断を示したものをいう。
  12. 情報セキュリティ実施手順 情報セキュリティ対策基準に基づき、情報システム及びこれを使用する業務において、どのような手順を実行していくかを示したものをいう。
  13. 不正アクセス 不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成11年法律第128号)第3条第2項各号に規定する行為をいう。
  14. 不正操作 正規のアクセス権を持たない人が、意図する意図しないにかかわらず本来の目的以外及び手法でコンピュータを利用することをいう。
  15. ウイルス 他人のコンピュータに勝手に入り込み、不具合を生じさせるプログラムをいう。
  16. マイナンバー利用事務系(個人番号利用事務系) 個人番号利用事務(社会保障、地方税若しくは防災に関する事務)又は戸籍事務等に関わる情報システム及びデータをいう。
  17. LGWAN接続系 人事給与、財務会計及び文書管理等LGWANに接続された情報システム及びその情報システムで取り扱うデータをいう。
  18. インターネット接続系 インターネットメール、ホームページ管理システム等に関わるインターネットに接続された情報システム及びその情報システムで取り扱うデータをいう。
  19. 通信経路の分割 LGWAN接続系とインターネット接続系の両環境間の通信環境を分離した上で、安全が確保された通信だけを許可できるようにすることをいう。
  20. 無害化通信 インターネットメール本文のテキスト化や端末への画面転送等により、コンピュータウイルス等の不正プログラムの付着が無い等、安全が確保された通信をいう。

(対象とする脅威)
第3 情報資産に対する脅威として、以下の脅威を想定し、情報セキュリティ対策を実施する。

  1. 不正アクセス、ウイルス攻撃、サービス不能攻撃等のサイバー攻撃や部外者の侵入等の意図的な要因による情報資産の漏えい・破壊・改ざん・消去、重要情報の詐取、内部不正等
  2. 情報資産の無断持ち出し、無許可ソフトウェアの使用等の規定違反、設計・開発の不備、プログラム上の欠陥、操作・設定ミス、メンテナンス不備、内部・外部監査機能の不備、委託管理の不備、マネジメントの欠陥、機器故障等の非意図的要因による情報資産の漏えい・破壊・消去等
  3. 地震、落雷、火災等の災害によるサービス及び業務の停止等
  4. 大規模・広範囲にわたる疾病による要員不足に伴うシステム運用の機能不全等
  5. 電力供給の途絶、通信の途絶、水道供給の途絶等のインフラの障害からの波及等

(適用範囲)
第4 この訓令の適用範囲は、次のとおりとする。

  1. 行政機関の範囲 対象となる組織は、遠野市のすべての執行機関、議会事務局及び公営企業(以下「市等」という。)とする。
    また、対象となる者は、市等の情報資産を取り扱うすべての職員(会計年度任用職員及び業務従事者を含む)、契約に基づき情報資産を取り扱う委託事業者その他の者(以下「職員等」という。)とする。
  2. 情報資産の範囲
    本基本方針が対象とする情報資産は、次のとおりとする。
    ア ネットワーク、情報システム及びこれらに関する設備、電磁的記録媒体
    イ ネットワーク及び情報システムで取り扱う情報(これらを印刷した文書を含む。)
    ウ 情報システムの仕様書及びネットワーク図等のシステム関連文書

(職員等の遵守義務)
第5 職員等は、情報セキュリティの重要性について共通の認識を持ち、業務の遂行に当たって情報セキュリティポリシー及び情報セキュリティ実施手順を遵守するものとする。

(情報セキュリティ対策)
第6 第3の脅威から情報資産を保護するために、以下の情報セキュリティ対策を講じる。

  1. 組織体制 本市の情報資産について、情報セキュリティ対策を推進する全庁的な組織体制を確立する。
  2. 情報資産の分類と管理 本市の保有する情報資産を機密性、完全性及び可用性に応じて分類し、当該分類に基づき情報セキュリティ対策を実施する。
  3. 情報システム全体の強靭性の向上 情報システム全体に対し、次の三段階の対策を講じる。
    ア マイナンバー利用事務系においては、原則として、他の領域との通信をできないようにした上で、端末からの情報持ち出し不可設定や端末への多要素認証の導入等により、住民情報の流出を防ぐ。
    イ LGWAN接続系においては、LGWANと接続する業務用システムと、インターネット接続系の情報システムとの通信経路を分割する。
    なお、両システム間で通信する場合には、無害化通信を実施する。
    ウ インターネット接続系においては、不正通信の監視機能の強化等の高度な情報セキュリティ対策を実施する。高度な情報セキュリティ対策として、都道府県と市区町村のインターネット接続口を集約した上で、自治体情報セキュリティクラウドの導入等を実施する。
  4. 物理的セキュリティ サーバ等、情報システム室等、通信回線等及び職員等のパソコン等の管理について、物理的な対策を講じる。
  5. 人的セキュリティ 情報セキュリティに関し、職員等が遵守すべき事項を定めるとともに、十分な教育及び啓発を行う等の人的な対策を講じる。
  6. 技術的セキュリティ コンピュータ等の管理、アクセス制御、不正プログラム対策、不正アクセス対策等の技術的対策を講じる。
  7. 運用 情報システムの監視、情報セキュリティポリシーの遵守状況の確認、業務委託を行う際のセキュリティ確保等、情報セキュリティポリシーの運用面の対策を講じるものとする。
    また、情報資産に対するセキュリティ侵害が発生した場合等に迅速かつ適正に対応するため、情報セキュリティインシデント対応要領を策定する。
  8. 業務委託と外部サービスの利用 業務委託する場合には、委託事業者を選定し、情報セキュリティ要件を明記した契約を締結し、委託事業者において必要なセキュリティ対策が確保されていることを確認し、必要に応じて契約に基づき措置を講じる。
    外部サービスを利用する場合には、利用にかかる規定を整備し対策を講じる。
    ソーシャルメディアサービスを利用する場合には、ソーシャルメディアサービスの運用手順を定め、ソーシャルメディアサービスで発信できる情報を規定し、利用するソーシャルメディアサービスごとの責任者を定める。
  9. 評価・見直し 情報セキュリティポリシーの遵守状況を検証するため、定期的又は必要に応じて情報セキュリティ監査及び自己点検を実施し、運用改善を行い、情報セキュリティの向上を図る。情報セキュリティポリシーの見直しが必要な場合は、情報セキュリティポリシーの見直しを行う。

(情報セキュリティ監査及び自己点検の実施)
第7 情報セキュリティポリシーの遵守状況を検証するため、定期的又は必要に応じて情報セキュリティ監査及び自己点検を実施する。

(情報セキュリティポリシーの見直し)
第8 情報セキュリティ監査及び自己点検の結果、情報セキュリティポリシーの見直しが必要となった場合及び情報セキュリティに関する状況の変化に対応するため新たに対策が必要になった場合には、情報セキュリティポリシーを見直す。

(情報セキュリティ対策基準の策定)
第9 第6、第7及び第8に規定する対策等を実施するために、具体的な遵守事項及び判断基準等を定める情報セキュリティ対策基準を策定する。

(情報セキュリティ実施手順の策定)
第10 情報セキュリティ対策基準に基づき、情報セキュリティ対策を実施するための具体的な手順を定めた情報セキュリティ実施手順を策定するものとする。
なお、情報セキュリティ実施手順は、公にすることにより本市の行政運営に重大な支障を及ぼすおそれがあることから非公開とする。

附則
この訓令は、平成17年10月1日から施行する。
附則
この訓令は、令和元年11月1日から施行する。
附則
この訓令は、令和4年11月1日から施行する。